漫画アプリ編集長が選ぶ、2017年に1500冊読んだ中でおもしろかった漫画24選

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こんばんは。コロクです。「漫画のセレクトショップ」というコンセプトの漫画アプリ・マンガトリガーの編集長として、いろんなことをしています。

 

もうすぐ2017年も終わり。今年は公私共に漫画にまみれ、おそらく人生で初めて新旧1500冊くらい漫画を読みました。お陰でWebメディアでのオススメ漫画レビューやトークイベント登壇など、色々新しいこともやらせていただいているのですが、まだまだ紹介したい作品は山ほどあります。

www.buzzfeed.com

www.huffingtonpost.jp

 

そこで、せっかくこれだけ漫画を読んだので、作品たちへの恩返しの意味も込めて今年読んでおもしろかった漫画を改めて24作選んでみました。

 

【面白かった漫画: 恋愛編】

1)ルポルタージュ
 舞台は2033年の日本。マッチングアプリやSNSが一般化し、恋愛がマイノリティになった社会を生きる男女の物語。乾いた毎日を送っているように見えた主人公・青枝聖の「ずっと誰かを愛したいと心の中で渇望していた」という言葉が印象的で、当たり前にしてきたはずの「恋愛」というものを改めて考えさせられる傑作。打ち切り後移籍先が決まって一安心です。

  

2)悪魔を憐れむ歌

『コオリオニ』や『高3限定』といったBL漫画家として知っていた梶本レイカ先生の新作。本格クライム・サスペンスでBLじゃないけど、男性の描き方がセクシー過ぎる。

 

3)潜熱

コンビニでバイトするフツーの女の子がヤクザに恋をした話。「禁断の恋」系はどうしてこうも興味をそそるのでしょうか。

 

4)来世は他人がいい

春の呪い』で「このマンガがすごい!2017」(オンナ編)2位にランクインした小西明日翔先生の新作。こちらは、大阪ヤクザの娘がちょっと頭がおかしい東京ヤクザの息子(婚約者)に惚れられ、迫られる物語。ヤクザものの恋愛漫画、最近人気なのかな。

【面白かった漫画: 深く考えさせられる系】

5)月曜日の友達

奇才・阿部共実先生の新作。中学生の多感な時期に抱える秘密って、ワクワクしました。大人の会談を登り始める水谷茜と月野透の緊張感のある関係は見ていてハラハラします。

 

6)BEASTARS

オンラインでもオフラインでも、今年あらゆるところで激推しした作品。肉食・草食動物たちの特徴を捉えつつも、微妙にステレオタイプを壊そうとする(あるいはそのステレオタイプに葛藤する)感情の機微に心を揺さぶられました。

 

7)北北西に曇と往け

アイスランドで探偵業を営む17歳の少年のお話。まだまだ謎が多く、先が気になるところ。

 

8)昭和天皇物語

日本国民にとって精神的に近く、物理的に遠い天皇という存在。この漫画は、そんな謎多き昭和天皇を「一人の人間」として捉え、出会いや別れ、怒りや哀しみなどを描いた秀作です。

【面白かった漫画: 泥沼・破滅系】

9)零落

浅野いにお先生、相変わらずこじらせてるなぁー。そう思いつつ、こうした主人公のような人生にちょっと羨ましさを抱いてしまう自分もいる。なんというか、破滅に向かう人に吸い寄せられちゃうんですよね。

 

10)世界で一番、俺が○○

失恋ショコラティエ』の水城せとな先生がイブニングで連載している作品。幼馴染三人が一年懸けて不幸自慢を競い合うという物語だが、後半になればなるほど加速度的に泥沼化していて、今かなりおもしろい。僕はこのゲーム、したくないなぁ。

 

11)ロッタレイン

こちらもBEASTARSよろしく公私共に激プッシュしていた作品。しかし圧倒的に女性に受けが悪かった…。しかし、アラサー男子だったら、「自分がこの境遇にいたら…」と想像するだけでゾッとするし、そんな中でこんな女の子が登場したら大変なことになる気持ちわかりますよね。ね?

 

12)血の轍

出ました。僕的こじらせ漫画大賞受賞作。押見修造先生は『惡の華』が大好きなのですが、本作も狂気じみてて嫌な汗が出てきます。間違いないです。

 

13)中学聖日記

かわかみじゅんこ先生は、実は『パリパリ伝説』というエッセイ漫画で知っていたので、本格的な物語を描かれた本作を見て驚いた。何か、中学生と大人の恋愛も流行ってるんですかね。

【面白かった漫画: ミステリー系】

14)夢で見たあの子のために

僕だけがいない街』の三部けい先生の新作。それだけで「ミステリー」としての安心感があるのは僕だけでしょうか。そして第一巻を読んで、更に期待感が増しました。超楽しみな作品の一つ。

 

15テセウスの船

タイムスリップもののミステリー。それこそ、『僕だけがいない街』に近い空気感がありますが、違うのは主人公が過去に戻っても子どもにならないのと、行き来できないこと。こちらはこちらで重厚なミステリーの空気感があり素敵です。

 

16)マイホームヒーロー

『ロッタレイン』『BEASTARS』に次いで、こちらもめちゃくちゃおもしろいと絶賛して回った作品。「愛する娘のために、父は殺人を犯し、完全犯罪を目論む」という、非常に刺激的な物語。しかも、お父さんはミステリーオタクだから死体の隠蔽工作が得意!人は意外と簡単にダークサイドに堕ちるのかもしれない……そんなことを考えさせられます。今年の新連載で個人的に一番おもしろいと思った作品です!

 

17)東京卍リベンジャーズ

新宿スワン』の和久井健先生のマガジン連載作品。こちらもタイムリープもので、忘れられない過去の過ちを正すために、ひょろいヤンキーが暴走族総長を目指すという物語。おもしろいです。

【面白かった漫画: ファンタジー系】

18)約束のネバーランド

このマンガがすごい!2018」オトコ編で堂々一位になった本作。少年ジャンプでたまに発生するダークファンタジーの極みみたいな作品ですが、物語も骨太で超おもしろい。最近一気読みしたけど、正直『Dr.STONE』よりもハマりました。

 

19)アリスと蔵六

『ぼくらのよあけ』の今井哲也先生の作品。絵があまり得意じゃないんですが、アニメ化されていたのと、過去作がおもしろかったので購入したら、まぁおもしろい。浮世離れした少女たちと頑固爺の組み合わせは結構ウルウルきちゃいますね。

 

20)終極エンゲージ

こちらも最近まとめ買いして読んだ作品。アプリ漫画って軽いものが多い印象(あくまで印象)ですが、最近は本当におもしろい作品が増えてきました。終極エンゲージはその代表例のようなものです。ジャンププラスで連載中の王道バトル漫画、必見です。

【面白かった漫画: 仕事・才能】

21)BLUE GIANT SUPREME

圧倒的熱量でJazzを描くのがこの作品。前作『BLUE GIANT』の衝撃的なエンディングから程なくして、前作以上に覚悟と責任を背負い込んだ宮本大の等身大のカリスマ性に嫉妬と畏怖の念を感じます。これからもっと盛り上がることを期待。

22)はじめアルゴリズム

モーニングで第一話を読んで、「あ、これいい」と瞬時に思った作品。老齢の数学者が片田舎で土に数式の落書きを書いていた少年に、数学者としての才を見出したところから始まる物語。若い世代に自分のなし得なかった夢を託すというシチュエーションはグッと来ます。

 

23)ダンス・ダンス・ダンスール

「バレエ」が題材というだけで少し遠ざけていたのですが、ジョージ朝倉先生は変わらずカリスマを描く天才でした。カリスマを描くくせに、結構つまずくし、一筋縄ではいかない感じが凄くいい。熱量も相変わらずで、ジョージ朝倉おそるべし…!

 

24)左ききのエレン

Webメディア「cakes」で連載が始まり、ネット上で話題が爆発した熱血ビジネス漫画。圧倒的熱量がこの漫画の魅力です。ジャンププラスでリメイク版が連載され、いよいよ第1巻が発売。「天才になれなかったすべての人へ」というメッセージに胸が締め付けられる……。仕事でくすぶっている人にこそ読んでほしいです。

 

僕にとって、漫画は手のひらサイズの社交場です。漫画で人と対話し、漫画で人を知る。普段出会えないような人たちが、漫画の中にはたくさんいます。2018年も、沢山の漫画と沢山の登場人物と出会えるのを楽しみにしています。

それではみなさん、良いお年を!

縁もゆかりもない人が黒川温泉に行きたくなる魔法。 #ジモコロ熊本復興ツアーへ行きませんでした

去る7月2日、一泊二日で熊本県は黒川温泉に100人規模のクリエイターが泊まって観光しようというイベントがありました。

kurokawawonderland.jp

2016年4月14日に発生した「熊本地震」。震災の爪跡は直接的な被害だけにとどまらず、風評被害として観光地に大きなダメージを与えています。南小国町にある「黒川温泉」もそのひとつ。震災直後からのキャンセルは41,736人。推定被害額は10億円を超えるそうです。

「少しでも熊本に協力できることを考えたい」

そこで生まれたのが黒川温泉にライター、編集者、クリエイターなどを100人集めて、「自腹でお金を落として」「100人が一斉に情報発信する」というシンプルなプロジェクトです。自分ひとりができることを形にする。その力が100人集まったらどうなるのか? 1泊2日の短い時間で生まれた「熱量」をお楽しみください。(サイトより引用)

 

すでに本イベントの記事はいたるところで公開されています(詳細は上記サイトを参照ください)。僕の周りの小さなコミュニティレベルなんでしょうけど、局所的なゲリラ豪雨級の盛り上がりを見せていて、編集後記的なエモブログも一通り出尽くした感あるし、いよいよ蛇足感が増してきたので何を書いたらよいのやらという状況に追い込まれています。それでも、悔しさと羨ましさと心苦しさを携え、勇気を振り絞って書いてみます。

 

みんなが熊本ツアーを楽しんでいたあの日、そこに私はいませんでした。 
なぜか。6月に前十字靭帯が断裂したからです。

 

私は熊本へ行きたかった。

6月早々にLCCの早割り往復チケットを2万円で購入し、「そうそう、僕も小学校2年生の時に阪神大震災で小学校に避難したなぁ。熊本も今大変かなぁ」「あー、そういえば嫁の親戚が大分の竹田市で割と阿蘇近いんだよなぁ。おじちゃんは大丈夫って言ってたなぁ」「別府・由布院は行ったことあるけど黒川温泉ははじめてやなぁ」「100人も来たら僕わりと人見知りしちゃうから新しい友だちはできて1人かなぁ」とか、いろんなことを考えながらその日を待っていました。それほどに、私は熊本に行きたかった。

例えばですよ、「今一番行きたい場所はどこ?」って聞かれたら、多分「黒川温泉」って答えます。

友だちから「今週末どっか行けへん?」って聞かれたら、「黒川温泉はどうかね」と提案するでしょう。

会社の同僚に「この後ランチどう?」って誘われても、うっかり「黒川温泉で?」って言っちゃいそうな勢いです。

もう一度言いますが、私は今回の旅で黒川温泉には行きませんでした。それでも、黒川温泉が今一番アツいということを周りに流布して回るでしょう。

なぜか。とりあえず写真を見てみてください。

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めちゃくちゃきれいやん!

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美味しそうな匂いさすやん!!

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なんか楽しそうやん!!!

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いい顔してるやん…!!!!

#ジモコロ熊本復興ツアー のハッシュタグを追いかけて行くと、こんな写真がずらりと並んでいるんですよ。行けなかった人間に対して、#ジモコロ熊本復興ツアーハッシュタグは罪です。シャネルの5番よりも誘惑が強いです。なんやったら、もう僕も熊本にいたんじゃないかと錯覚してきました。まぁ、行ってないんですけど。

僕少し思いました。こんなステキな写真がずらりと並んでいると、行ってた人たちを知らなくても黒川温泉好きになるんじゃないかなって。大金をはたいてネットをざわつかせる広告を打って「バズって良かったですね」となるよりも、はるかに価値があるんじゃないかって。何というか、表情で「みんないい旅してるな」「いい風景、美味しいご飯、ステキな人がそこにいるんだな」っていうのが伝わります。

リアルタイムに流れてくる #ジモコロ熊本復興ツアー の写真見てたら、「なんか黒川温泉盛り上がってる」ってなるし、その後行ってきた人たちがそれぞれの思いを乗せて書いた記事がいろんなメディアで出ると、何気なく点在していた写真にもストーリーができちゃうし。このツアーにかかわっている人たちが僕の好きな人たちなので、どこまでいっても客観視は難しいのですが、それを差し引いても、魅力的じゃないかと本気で思います。参加しているみなさんも、おもてなしをしている現地のみなさんも、みんな本気で取り組んでいるのが素晴らしいですね。

かくして黒川温泉は、僕が今行きたい場所No.1に君臨しているのでした。

僕も年末年始、どこかで黒川温泉に遊びに行こうと思います。最後に、もしこのブログを見て少しでも熊本、黒川温泉に興味を持った方がいらっしゃったら、今年の国内旅行地にぜひ黒川温泉を視野に入れてご検討ください。1人でも行っていただけたのならば、ツアーに参加していない僕でも少しは貢献できたのかなと思えそうです。

間接的にではありますが、黒川温泉とできた不思議な縁が続くこと。そして、被災された熊本大分エリアの観光地に観光客が途切れることのないよう、陰ながら願っています。

切れるのは僕の靭帯だけで十分です。

「誰に届けたいか」よりも「誰かに届けたい」を大切にしたい

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6月25日は濃厚な一日だった。

午後から縁あってディアステージ主催の「DEARSTAGE SHOWCASE」を見させてもらい、夜は夜で韻シスト主催のライブイベント「Neighbor Food」に1人で乗り込んだ。アイドルのステージを見るのは実質はじめてで、韻シストはかれこれ15年位見続けているただのファンである。

アイドルのステージは、一言で言うと最高だった。僕はアイドルについては素人なので多くを語れないけども、アイドルとオーディエンスの2つのエネルギーがぶつかり合い1つの作品として昇華するさまは、愛にあふれた美しいアート作品のようにも感じた。でんぱ組.incのステージはそれが顕著だった。

その膨大なエネルギーを抱えきれず、オープニングアクトのニァピン(妄想キャリブレーションの星野ニアとでんぱ組.incのピンキーこと藤咲彩音のユニット)のステージを見て思わず涙してしまった。ただただ僕の情緒が不安定すぎた。誰か一緒に秋葉原ディアステージに行きましょう。

韻シストは、いつステージを見てもアップデートがある。更新し続ける彼らのスタイルに、イチファンとして振り回されることもしばしばあったけど、最近は骨太のビートの上にすべてを包み込むような優しさが現れつつある。決して順風満帆ではなかっただろう18年のプロセスの上に彼らの今の音が、リリックが存在することを毎度ライブで感じさせてくれるのがいい。

スペシャルゲストとしてやってきたKenKenも最高だったし、TAKUのギター演奏中の恍惚とした表情を見る時間がわりと好きだ。あれはきっとイッてると思われる。関西出身の僕にとって、東京にいながらホームを感じさせられる素晴らしいショウケースだった。 

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今回はじめて拝見したアイドルも、昔からフォローしている韻シストも、どちらも苦労人。アンダーグラウンドの舞台で努力を重ねてきたアーティストだ。時にはニーズを汲み取りながら表現をしてみたり、失敗を繰り返して今のスタイルに到達していると思う。

そんなこんなで、僕の大殺界が通りすぎようとしている。苦しかった6月を締めくくるには素晴らしい週末だった。

しかし、こうした素晴らしい表現を五感すべてで受け止めると否が応でも刺激になるし、悔しい。でんぱ組.incにしろ韻シストにしろ、彼ら彼女らの中に届けたい想いや表現したいものがたしかにあって、その熱量が遠心力をもって伝播していく。深淵には、誰に届けたいか、ではなく、誰かに届いて欲しいというメッセージがある。だから琴線に触れてくるのだろう。

僕は仕事柄、動画コンテンツをつくったり、趣味で記事を書いたりしているが、わりと「これは誰に届けたいのか」ということを考えるのが癖になっている。ターゲットを立てて、コンセプトを設計して、切り口を考えて……。特に仕事の場合は、そこに市場がなければお金を生みにくいためそれが正しい考え方なんだと思ってきた。これも間違ってはいない。

でも、多分こうした仕事ばかりしていたら勝てないんだろうなとも思う。オンでもオフでも、「誰かに届けたい」と思えるヒト・モノ・コトに出会い、ちゃんと届けられるコンテンツを作れる、もしくはサポートできるような、そんな人になりたい。